2022年度全国通訳案内士試験の2次合格発表がありました。合格された方おめでとうございます!
試験の情報や試験勉強に関する情報は今ではそこそこネット検索で見つかりますが、では実際合格したらどうすればいいのか?
という疑問を抱いている方も多いと思います。
今回は現役英語通訳案内士の私が合格後にするべきことをご案内します。
都道府県に登録をして全国通訳案内士証を発行してもら
まず、合格しただけではお仕事はできませんので、都道府県へ登録をします。
ご自身がお住まいの地域の都道府県の観光課などが担当になっているはずです。
例外としては関西広域連合内の府県は関西広域連合が登録先となっています。
どの都道府県も基本的な手続きは同じはずですので、こちらに千葉県の例を挙げます。
1. 全国通訳案内士登録申請書1枚(フォーマット有り)
2. 健康診断書1枚(フォーマット有り)
3. 合格証書の原本
4. 合格証書の写し1枚
5. 写真2枚
6. 宣誓書(代理人)1枚 (フォーマット有り)
7. 代理権限授権書1枚(フォーマット有り)※本邦内に住所を有しない者に限る。
8. 宣誓書(代理人)1枚(フォーマット有り)※本邦内に住所を有しない者に限る。
9. パスポート※本邦内に住所を有しない者に限る。
10. 申請手数料(千葉県収入証紙5,100円)
※7~9は本邦内に住所を有しない方(「非居住者」)が、その代理人の住所地を管轄する都道府県へ申請する場合に必要になります。
以上の写真を揃えて千葉県商工労働部観光誘致促進課国内プロモーション班に事前連絡の上持参します。郵送提出は不可です。
通訳案内士の仕事に関する情報収集をする
都道府県に登録を済ませてしまえば晴れて、通訳ガイドとして稼働できます。
しかし試験勉強と仕事は違います。試験に通っただけでは実際にどのように仕事に繋げることができるか全くわからない状態だと思います。
今では通訳案内士資格を持っていなくてもガイドができますので、アルバイト感覚で気軽に始めることも可能です。
しかしガイドを職業としてやっていきたいと思うのでしたら、やはり旅行会社さんとお付き合いをするのは必須でしょう。
旅行業には世界中にネットワークがあり、多くの旅行会社がそのネットワークを生かして旅行者を日本に送り込んでくれます。
そのネットワークに乗ってお仕事をしたほうが多くのチャンスがあります。
ただし旅行業界には長い年月をかけて築き上げられたルールがあるので、それを知らずに「資格を取ったのでガイドをやらせてください」と言ってもそう簡単にお仕事はもらえません。
通訳案内士のお仕事は基本的に一人で行います。プロとして即戦力になることが期待されています。「何もわからないけどとりあえず始めて仕事をしながら学びたい」などと言う考えは危険です。
仕事をもらうには「このガイドにはお客様を任せても大丈夫」と安心してもらう必要があります。
お知り合いに現役のガイドさんがいれば、直接聞いてみるのがいいでしょう。
ガイドが実際の現場で果たす役割や、準備の仕方、仕事の探し方など、実際に稼働するまでに学ぶべきことはまだまだたくさんあります。
近くに教えてくれる人がいなければ各通訳案内士の団体が実施している新人研修会に参加してみましょう。
今後の準備の仕方や、ガイディングのヒントなどを教えてくれます。なにより人脈ができるのが一番のメリットです。
また、どの団体も無料で事前説明会も実施していますので、業界の概要をつかむためにも色々な団体のお話を聞くといいと思います。
それぞれの団体にベテランガイドがいて、熱心に教えてくれますので、どこの団体でも学ぶべきことは沢山あります。
ただ、ガイド団体ではない学校や旅行会社や個人などがやっている研修会は講師ガイドの経験も浅く質も伴っていない、自社でしか通じない知識を教えている場合がありますのでご注意ください。
主なガイド団体は観光庁からも案内があると思いますがこちらにもまとめてあります↓
通訳案内士として仕事の準備を進める
仕事をするに当たってはガイディングはもちろん大事ですが、それと同じぐらい添乗業務も重要です。
たとえ話が面白くても、時間管理がいい加減で予定していた新幹線の時間に間に合わなかった、話に夢中で迷子になった、そんなことばかりしていたらお客さんもだんだんイライラしてきますし、冗談にも笑えなくなってしまいます。
楽しい話をしながらも、しっかり行程をこなしていくことで信頼を獲得できるのです。
ガイディングは先輩ガイドにヒントはもらえるかもしれませんが、基本は自分で用意するものです。できるだけ多くの場面を想定して、沢山の話を用意しましょう。
お客様は色々な人がいますので、お客様の興味にに合った話題も広く用意して行くことも大事です。
しかしそれぞれのガイドさんにもそれぞれの得意分野があると思いますので、そのような分野の話を中心にまとめていくと、深い話ができますしオリジナリティが出ます。
添乗業務に関してはなかなか自分では勉強できません。これは旅行会社のルールでもありますので、現場で経験を積むしかないのです。
可能であれば添乗員のお仕事を数カ月でもしてみるといいと思います。「旅程管理主任者資格」を取るのもいいでしょう。
旅程管理者資格は必ずしもインバウンドのツアーで必要のある資格ではありません。しかし、その取得過程で習う知識は新人ガイドに必要な知識ばかりです。
旅行業に初めて飛び込もうとしている人は、特にしっかり準備をしましょう。
通訳案内士には基本見習い制度というのはありません。仕事をアサインされたら最初からプロの仕事を求められます。
ですので少し回り道をしてでも費用をかけてでも十分すぎるぐらいの準備をしてからお仕事を獲得してください。
旅行業未経験のかたが経験を積むためには添乗員のお仕事経験をしてみるのも有効です。
旅行会社さんが新人ガイドに仕事をアサインするときに実は一番心配なのが旅程管理の部分なのです。
楽しいお話ができるのも大事なのですが、安全に確実にツアーをリードするというのは実は経験が必要で難しいのです。
ガイド経験が浅くても添乗経験が豊富であれば、旅行会社さんも任せやすいのです。
必ずしも添乗員の経験が必要ではありませんが確実にステップを踏んでいきたい方は、添乗員を経験しておくといいでしょう。
添乗員のいい所は新人はいきなり一人で添乗することはなく、複数台のバスツアーなどで先輩添乗員から学べることです。
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通訳案内士の仕事の獲得方法
仕事を遂行できる準備がしっかり整ったら、お仕事を獲得します。
お仕事の獲得方法は幾つかあります。その中でも主要な取引形態としては
旅行会社が直接ガイドに仕事を発注する
派遣会社の社員としてガイドを依頼する
の2通りがあります。実際はもっといろいろなルートがありますが、この2つのボリュームが一番多いです。
新人ガイドに一番お勧めなのは派遣会社に登録することです。
派遣会社は色々な旅行会社に添乗員や通訳案内士を派遣しています。また旅程管理主任者資格を取るための研修も行っています。
派遣会社には色々な仕事がありますので、最初は新人のレベルに合ったお仕事をアサインしてくれることでしょう。
旅行会社さんは小規模なところだと人が足らないので、段階を踏むということもなく、いきなり1週間や2週間のツアーを任されてしまうこともありますので危険です。
派遣会社が最初にアサインしてくれるのは空港からホテルまでの送迎や、ホテルから新幹線乗せこみなどの業務などです。
そのあいだ特にガイディングをする必要はないのですが、少しずつ会話をしながら外国人観光客との会話に慣れていくといいでしょう。空港でも出迎えも、フライト変更やバッゲージロスト、バスの運転手さんとの打ち合わせ、ホテルの方達との打ち合わせなど色々やることはあります。
新幹線に乗せるだけでも、東京駅にのどこにタクシーが到着して、どの動線でホームにご案内して、チケットの使い方はどうするのか。など新人にはわからないことだらけです。
どれも上手く行っている時はいいのですが、お客様と会えなかったり、時間に間に合わなかったり、現場色々なトラブルが発生します。それを落ち着いて解決するにはやはり経験がものを言います。
このようなトラブルに対処するにはかなりのエネルギーを使いますので、ガイディングどころではなくなってしまいます。
まずはガイディングしなくていい仕事から始めて、トラブルも余裕でこなせるようになったら本格的にガイドを始めても遅くはありません。
派遣会社経由の仕事は当然派遣会社の手数料もかかりますので若干日当も下がります。
派遣会社に中抜きされているような気になってしまうので敬遠しがちですが、新人にとってはサポートをしてくれる会社があるというのはとても有難いことなのです。
私の場合は前職は旅行業ではありませんでしたが、カナダ留学中に現地ガイドのお仕事を2年間経験していましたし、日本でも少し添乗員のアルバイトをしたり、インバウンドのツアーのアシスタント的な仕事をしました。
そのため周りにはお話を聞ける先輩ガイドは沢山いました。それでもガイド団体の関東、関西の新人研修会には参加して、色々なツアーにも自腹で乗って勉強しました。
そのおかげで旅行会社さんからも通訳案内士資格を取ってからすぐに即戦力としてツアーを任せてもらうことができました。これも色々な回り道と準備をしたおかげだと思います。
簡単にガイドを始める方法もある
いままでお話したのはあくまで、旅行会社さんの企画、手配する移動や宿泊も伴う一般的なツアーの話です。
そのレールにちゃんと乗っていくには、しっかりと業界に求められるスタンダードを満たさないといけません。
しかし現在はもっと多様なお仕事があります。
例えば夜に居酒屋を飲み歩くツアーや買い物をするツアーなどです。
そういった短時間の街歩きだけのツアーでしたら、あまり業界の知識も経験もいりませんし「おもてなしの心」があれば大丈夫です。英語が得意なアルバイト学生もやっているでしょう。だだし通訳案内士の資格さえなくてもできてしまう仕事は当然安いです。
そのようなアクティビティーをスポットで販売している会社もありますので、そのような仕事が良ければ、企画している会社に直接応募して面接を受ければ採用になるでしょう。そのような会社なら先輩ガイドの仕事も見せてもらって習うこともできるでしょう。
通訳案内士として稼働して生活して行くということを考えるとそのようなスポットの仕事では生計を立てるとはできませんが、扶養内や定年退職後のお小遣い稼ぎでしたら十分でしょう。
またそのようなツアーを自分で企画して販売することも可能です。インターネットには旅行客とガイド結び合わせるマッチングサイトが沢山あります。
自分で内容を決めて、値段を決めて販売します。予約が入れば20~30%程度の手数料がマッチングサイトに課金されますが、予約が無ければ特に費用は発生しません。
このようなサイトは通常はレーティングシステムもありますので、お客様に直接評価されるという怖さもあります。
新人だからと言ってミスばかりしていたら、評価も悪くなるのでなかなか予約は入らなくなります。
また何か事故などがあった場合、旅行会社のツアーでしたら保険にも入っていますが、自分でツアーをする場合は誰も助けてくれません。自分のミスでお客様などに怪我をさせてしまった場合の賠償責任の対策もしておくといいでしょう。
自分のツアーを販売するというのは簡単に始められますが、それなりの責任も伴いますので慎重に行いましょう。
まとめ
全国通訳案内士試験に合格したら都道府県に登録をします。
すぐ仕事をすることができますが、旅行会社のツアーをしたければ念入りな準備が必要です。
各ガイド団体の新人研修に参加したり、添乗員の経験を積むなどするといいでしょう。
アルバイト感覚でガイドをしたいのでしたら、いきなり応募しても大丈夫でしょう。
また自分でツアーを企画してもいいと思います。ただすべて自己責任なので思っているよりも大変かもしれません。
ガイドで生活して行きたいなら旅行会社や派遣会社とのお付き合いは必須です。