こちらの本も別の作者の本でおススメされてたので読んでみました。
2003年初版という結構古い本です。
作者の板倉雄一郎氏は若くしてIT企業の株式会社ハイパーネットを経営し一時期は時代を先取りしてITバブルの時代の真っ只中を生きていましたが、急な資金繰りの悪化で銀行の資金引き上げに合い会社が倒産するに至りました。その顛末をまとめたのが「社長失格」という著書です。
その出版をきっかけに板倉氏は再び世の中に出てくることになるわけですが、この本はその「社長失格」のその後に位置付けられた本です。
私は「社長失格」自体はまだ読んでいませんが、この本を読み、読んでみたくなりましたので次の読書リストに入れておきます。
さて板倉氏は会社を潰した後、船橋の実家に引きこもります。そして愛犬と海老川沿いをを散歩する毎日。地元の者からすると海老川といのが出てきただけで親近感です。そしてそれがいかにITバブルと対照的な田舎で静かな場所なのかということも容易に理解できます。
一時代を築き、会社がつぶれるまでの顛末を「社長失格」にまとめ、意図せずもミリオンセラー作家になった板倉氏は世の中に引きずりだされます。
そして色んな人との出会いを通し、色んな感情が巡ります。同じ時期を生きた起業家たちの成功をうらやましく思ったり、再起をしようと願ったり。でも実は今の平穏な日常が気に入っていたり。
板倉氏はとても女性好きですしそれが生きる原動力ともなていますが、同時にとてもモテたようで、その遍歴を読むのもなかなか面白いです。今この時代ではかなりタブーとなった不倫などの描写もあります。かなり人が好きなようで男女いとわず沢山の人との交流を楽しんでいます。
そのなかで気づいたのは常に自分は新しいことを始めるのが好きであって、会社を維持して大きくしていくような経営者には向いていないということ。そして自分で全て頑張らずにパートナーを信じて一緒にやっていくということの大事さ。
そういった生活の中で過去の同僚や部下と再開もあり、自分を見直すチャンスにも恵まれます。
私の中ではベンチャーの起業家のビジネス書だと思って読み始めました。もちろん経営者の鋭い視点や、経験談など学ぶべきところも多いのですが、なんと言うか純粋に物語として面白かったです。成功しても満たされず、色々遊んでみても満たされず、何が自分にとっての幸福なのかを追い求めている板倉氏の葛藤はなかなか人間味があり面白いです。
この本から17年経ち今の板倉氏の様子はFacebookでも知ることができますが、大きな経営者としての復活よりも、若手起業家の支援をしながら仲間との交流を楽しんでいるようです。
- 海老川の夏
- 一本の電話
- 輝かしき日々
- 亡霊の復活
- 何もない
- 自由
- 誘い
- 別れの回想
- もうひとつの恩恵
- 「社長失格」発売記念
- YEO
- 講演活動
- 僕が先生?
- 不倫飛行
- ネットバブル
- ベンチャーキャピタル
- やってみるか
- 特許
- 「ついで」の顧問
- 自分のバリュー
- プレスリリース
- 不倫よ、さようなら
- エネルギーの矛先を探して
- 出鼻をくじかれる
- さらなる失敗
- 発見
- パートナー
- ちょっと待て
- パーティー
- 「懲りないくん」
- 特許ふたたび
- 久しぶりの渡米
- あせり
- 夜遊び仲間からの誘い
- ニュース
- 始動
- 考える時間
- 9.11
- オンエア
- 変化が欲しい
- 後遺症
- 変化
- 呪縛
- 後片付け
- 精鋭たちのその後
- 海老川の冬